インタビュー

パソナ・シーズクラブに参加し、
独立起業された方々のエピソードをご紹介します。

製薬メーカーから一転、
寿司職人としてお店を開業。

大手製薬メーカーを早期退職。
調理師学校および寿司職人の養成学校で学び、2023年10月、横浜市戸塚区に自らの江戸前寿司店を開業されました。
(取材日:2024年1月)

江戸前寿司「信」 店主 安田 信之 さん (58歳)

職歴と前職の仕事について

北海道大学の薬学部を出て、最初は薬と関係ないところに就職しました。約1年勤めましたが、自分とは合わず、製薬会社に転職しました。その後は会社を移ったり、合併で会社が変わったりしましたが、ずっと製薬会社勤務です。製薬会社では主に新薬のマーケティングを担当していました。

早期退職を決めた理由

退職を決めた理由はいろいろあります。製薬会社ではよくある話ですが、合併で他の会社の人たちが入ってきて職場がぎくしゃくするようになって。また年齢的にも「自分のピークは過ぎたかな。会社に残っても今まで以上のパフォーマンスは出せないかな」と思い始めました。プライベートでは両親を相次いで亡くしたことが大きかったですね。2人とも老人ホームに入っていて、先に父が亡くなり、残された母が「寂しい」と言っていたにも関わらず、仕事が忙しくてなかなか会いに行けなくて。
その後悔があり、時間の使い方は自分で決めたいと考えるようになりました。また、両親の次は自分だと思った時、やり残したことがないようにしたいと思いました。そうした理由が重なり「もう辞めよう」と思った時に、ちょうど早期退職の話が出てきて、良い条件だったこともあり、退職を決意しました。

飲食店を目指したきっかけ

釣りが好きで、会社の「釣りクラブ」で毎月いろいろな釣りを楽しんでいました。釣った魚は自分で捌いて自分で料理することもありました。そうしたなか、コロナ禍で在宅勤務になり、往復3時間の通勤時間がなくなって時間ができ、料理をつくるようになりました。それを食べた家族が「美味しい!」と言ってくれるのが嬉しくて。せっかくなら仕事として料理をやってみたいなと。手先は器用でないし、てきぱき動くほうでもないので、「飲食店は向かないかな」とも思いましたが、人生に悔いを残したくないという気持ちが強く、チャレンジすることを決めました。恩師に相談したら、「やめとけ」と猛反対されましたけどね。

寿司職人を目指して

魚が好きなので、当初は海鮮居酒屋を開きたいと考えていました。まずは基礎から学ばなくてはと思い、横浜の調理師専門学校に1年間通いました。周りは若者ばかりでしたが、学校生活はとても楽しく、友人もできて、有意義な時間を過ごしました。在学中は技術を身に付けるためにアルバイトも行いました。年齢的に働かせてもらえないお店が多かったのですが、市場に採用していただき、週2回、学校に行く前の約2時間で魚を4~5匹捌くという経験を積ませてもらいました。進路を寿司に変えたのは、昨年のお正月のこと。自分で釣った魚を刺身にし、さらに動画を参考に寿司を握って、家族に振る舞ったところ、「刺身より寿司が美味しい」と言われて。自分で食べても確かに美味しくて。それでその気になり、寿司職人の養成学校に通い始めました。

開業を果たして

寿司学校を卒業後、自宅から程近い戸塚の「はんなり横丁」に居抜き物件を見つけて、カウンターだけの江戸前寿司店をオープンしました。開店から約3 ヵ月、寿司を握るのも、お客様とやりとりするのも楽しいですし、立ちっぱなしの仕事にも慣れてきました。とはいえ、まだまだのことばかりで、魚の仕入れはアルバイト時代にお世話になった仲卸さんに教えていただき、忙しい時は家族に手伝ってもらっています。小さな店ですが、わたしが経営者なので、新メニューも宣伝方法も自分の判断でできてしまう。それがやりがいでもあり、怖さでもありますね。いまはお客様一人ひとりを大切に、来てくださったお客様にリピーターになっていただけるよう、最善の努力をしていこうと思っています。

パソナのサポートについて

退職から開店までの約2年間、パソナさんにはいろいろフォローしていただきました。調理師学校へ通った1年間も定期的に連絡をくださり、モチベーションが下がることはありませんでした。起業も飲食業界も初めてで不安ななか、いつでもアドバイスをいただけることに大きな安心感がありました。パソコン関係があまり得意ではないので、その部分のサポートがありがたかったです。パソナさんが開催する1日でホームページをつくるセミナーに参加して、簡単に制作・更新ができるアプリとその使い方を教えてもらいましたし、お店のロゴデザインなどはWEB上で依頼できるプラットフォームを紹介してもらいました。わからないことだらけでしたので、細々したことを聞けるのもとても心強かったです。

これから独立を志す人たちに向けて

セカンドキャリアを考えた時、自分ができるかできないかよりも、やりたいかやりたくないかが重要だと思います。わたしは飲食の仕事をしてみたい、経営者をやってみたいと思い、試してみることを選択しました。一度の人生ですから後悔はしたくない。自分の人生を後悔しないためにどうするか、それを判断基準にこれからの進み方を決めれば良いのではないかなと思います。

パソナ独立セカンドライフ支援コース コンサルタント 須藤 有紀

一般にお寿司屋さんというと、何十年も修行する、みたいなイメージがありますが、安田さんは、そんなことないんだよ!できるんだよ!ということを体現されていて、すごいと思います。また、揺るぎない意思を持って開業に向けて準備してきましたので、私も伴走することができて、非常にワクワクと楽しかったです。最近では、「薬学部の実験に近い感覚」と言いながら、熱心にメニューの研究をされているので、「江戸前寿司 信」がさらに進化していくことを楽しみにしています。